今、唐木位牌の木地の造り方のほとんどが台座を一つに固め札板はダボ差し、ウレタン塗りであり塗装を一度で済ませるために台座は接着剤で貼り重ねてあります。
唐木材は堅いため接着剤はほとんど効きません。また接着剤が劣化すると台座はバラバラになります。札板と台座の接合は札板の材が短くて済むためダボ接ぎがほとんどです。手間をかけずに早く作るためです。
安価に作るためには良いことですがこれでは永く使うことができません。
指孝工房謹製の唐木位牌の木地は良質の紫檀材を使い、古代から受け継ぐ技法で造られています。札板から最下位の台座までの各部品のほとんどを一木の刳りもので作り出し、指物技法で札板に各部品を差し立てています。堅固な造りなので何世代もの永代使用していただけます。
- 一般的商業ベースの摺り漆塗りと称するものはウレタン塗装した上に一、二回摺り漆をするのがほとんどです。摺り漆とは欅材にする方法で少し拭き取りをあまく、回数を少なくし、仕上がりの雰囲気は民芸調になる技法です。
私は工芸家として奈良、平安、鎌倉時代の漆木工芸品を調査、研究を重ねた結論は何百年の時代に耐えるためにはそれ相当の手間を掛けなければ持ちこたえることが出来ないことがわかりました。
拭き漆で大事な点は透明度をひきだし、綺麗に仕上げる事です。そのためには拭きむらを残さないように、丁寧に拭き取ることが大事です。一度の拭き漆で漆の層は0,5ミクロン、約1/5000㎜しか肉がつきませんのでどうしても15~16回の重ねが最低限必要です。
古代の拭き漆を調査しますと10~20回重ねています、1000年ほど経た今日でも光沢は持続しています。現存する奈良平安期のもので漆の塗膜力は実証されています。よって200年の歳月にたえるためには本式の拭き漆仕上げでなければなりません。拭き漆仕上げ工程の手板見本の26番の艶と指孝謹製の位牌の艶を見比べていただければご理解いただける事と存じます。